2009/07/24
【日記】ヨシムさん個展「大8展」に行ってきました。
先日、イラストレーター仲間でマイミクのヨシムラヨシユキさんの個展「大8展」を見に、目黒のギャラリー「やさしい予感」にいってきました。
ヨシムさんといえば知る人ぞ知るイラストレーター界切っての古参ゲーマーであり、8ビット機と任天堂を愛してやまない自称「パワーグローブの最も似合う男」でありまして、今回の個展のDMの書かれた「昭和は遠くになりにけりとお嘆きのチョイ8オヤジ達は全員目黒に集合だ!」の売り文句に導かれるように目黒へと足を運んだのですが、実に見ごたえのある作品の数々に度肝を抜かれると同時に、オープニングパーティのトークショーにゲスト参加されたこれまたR35世代には知らない人間は居ないと言われる高橋名人の軽快絶妙トークに抱腹絶倒の3時間を過ごすことになったのでした。
「やさしい予感」は古風でおしゃれな一軒屋を改造したギャラリーで、家庭的な雰囲気が味わえる空間でしたが、まさにそこにぴったりなヨシムさんのイラストの数々。A0版に印刷された書下ろしイラストは10枚にものぼり、テーマは1980年代に子供たちを熱狂させた「スターソルジャー」や「スパルタンX」などのファミコンソフトとなっており、ヨシムさんのPOPなタッチにアレンジされた元気のよいそれらの作品はノスタルジーを刺激するだけでなく、純粋に見ごたえ抜群でした。
会場は二階にも広がっていて、上がると畳の居間にちゃぶ台がおかれていて、テレビにはファミコンの画面が!どうぞ遊んでくださいというこのサービス精神は、仲のよい友達の家に遊びに来たような感覚に陥ります。反対側の壁にはさまざまな仕事で描かれた作品が展示されてましたが、その多種多様さにうならされました。雑誌の表紙を数多く手がけられているので、本そのものが「作品」としてなりたっています。これは憧れです。比べても仕方ないけど、「僕とは仕事量がまるで違う・・・」と思いました。雑誌の表紙を手がけたくて一度編集プロダクションの方に相談したことがあったのですが、「あなたの絵はねぇ・・・万人に好かれるだろうけど、逆にいうとインパクトに欠けるのよ。ハッキリいって表紙には向いてないんだわ」と言われ、「いえ、タッチを変えることはできますが」と反論したところ、「増やそうと思って簡単に増やせるようなタッチでは、表紙を飾れるほどのインパクトは出せないんだよ」と手厳しい言葉を頂いたことがあります。自分に足りていないものは自分でもよくわかっているので、日々精進しなければならないなぁと思いました。
さて、そんなこんなで展示を見て回るうちに、オープニングパーティの時間となり、会場のフロアに降りていったところ、すでに50人を越す大勢の人が!なんとか末席に座れたからよかったものの、ずいぶん立ち見の方もおられたようで、ヨシムさんの人気ぷりを思い知らされました。僕が今、個展を開いたところで、10人来客があればいい方じゃなかろうか・・なんて思います。
そこで高橋名人の登場です。今年御年50歳だそうで、てことは僕らが小学生のころ神とあがめてた80年後半代は20代後半だったんですね。ずいぶん大人だと思っていたのですが、今の自分より若かったんだなぁ・・・。
本人の生い立ちからヨシムさんとの出会いについて、当時のゲーム業界の実情や高橋名人の冒険島制作秘話など、実に話術巧みに語られ、1時間の予定が1時間半ほどしゃべりっぱなし。それでもあっという間に感じるほど面白いトークショーでした。
観客からの熱い要望で、生16連打を実演していただけましたが、本人曰くは「正直今は13連打くらい」だそうです。笑う観客に「カールルイスだって今9秒台で走れるわけじゃないんだ!」と非常に説得力のある説明をされ、なんというか諸行無常を感じた次第です。
そんなこんなでトークショーも終了。会場の閉館時間も過ぎたので一同外へと出たのですが、正直、同業さんの個展を見に来てこれほど楽しめたことはないんじゃないかと思うほどの満足感を感じました。
A0サイズの絵が人に与えるインパクトは、やはりA4とは比べ物にならないなぁと当たり前のことを考えながら、仕事ではせいぜいA3くらいしか描かない身の上を思いました。ヨシムさんもあれだけ活躍されながら個展用にこれだけの書き下ろし作品を描いてしまうというエネルギーに憧憬の念を持ちましたが、同時にめらめらと創作意欲が沸くのを感じつつ電車に揺られたのでした。われながら単純ですが、今はでっかい絵を描いてみたいです。