2013/10/08

ご存知大手通販サイト「amazon.com」が提供する電子書籍サービス「Kindle(キンドル)」
この誕生以降とてもお手軽に電子書籍を楽しめるようになりました。
iPadのコモディティ化も伴っていよいよ電子書籍元年(何度目だ)かと騒がれた2012年末、
ひとつのサービスが開始されました。
「
Kindle Direct Publishing(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)」略して「KDP」です。
その名の通り、
Kindleストアで直接電子書籍を出版できちゃうぜーという
サービスなのですが、これが実に簡単に個人が出版社を通さず書籍を出版できるという
画期的なモノなので「これは僕も是非出版したい!」と思い、
すでに持っているコンテンツの中のひとつ、昨年描いた
どうしようもない自伝エッセイマンガ「
トコノクボ」を出版してみたのでした。
感想としては、たしかにとても簡単だったのだけれど、
まだ始まったばかりのサービスだからかよくわからなかった点などもあり、
結構右往左往して時間かかっちゃったなーというところです。
以下、そのプロセスをまとめてみました。
専門用語が多数ありますので興味ある方だけどうぞ。
■まず、原稿を用意してみた。僕の漫画の原稿は解像度350dpiのA4サイズで書かれているのでピクセル数は2894x4093px。
CLIP Studio Paintで作成し、最終的にはPhotoshopで仕上げているので
psd形式が原データなのですが、これをそのままjpg化したら容量が大きすぎてしまうので
軽量化する必要があります。では、何pxx何pxにすべきか、というところで悩みました。
Kindle FireというAmazonの電子書籍端末の解像度は600x1024pxです。
ではそれに合わすべきかというと、どうも小さすぎる気がするわけです。
同じくKindle端末として使用できるiPad(第三世代以降)の解像度が1536x2048pxなので
幅600pxのjpgデータを表示した場合、かなりぼけやけ見えてしまう。(実機で体験済み)
悩んだ挙句、セルシスさんがサイトで公開している「
さっそくKindle用コミックを公開してみよう!」
で公開されているサンプルデータなどを参考に、900x1273pxに落ち着きました。
(ちなみにComicStudioで漫画データを作成されている方は上記セルシスさんの提案方法が
一番手っ取り早いと思います。僕はコミスタを使わずpsdデータで全ページ作成しているので
別な手段を取る必要があったのでした)
過去の原稿を見直すと色々とアラが目立つので、
手を加えながら1ページずつリサイズしていきます。
そういえば電子書籍業界の最先端を走られている漫画家の鈴木みそさんが
コミックビームで現在連載中の「
ナナのリテラシー」最新話(3話)によると、
幅800pxで統一されているようです。
やはりそのあたりが落とし所のサイズだったのですね。
ちなみにみそさんも過去の原稿は気になる点が多いらしく、レタッチされている描写があって
「
あるあるーーその気持ちわかるわーー」と大変共感しました。
ファイル名はxxxx001.jpgから順に番号を上げていく感じで保存です。
そんなわけで、原稿データの準備完了。
■KDPアカウントを取得してみた。こちらのページからアカウントを取得できます。
amazonアカウントをお持ちならそのままKDPアカウントが作れます。
ログインした後は、売上の支払い方法などを選択します。
印税は米amazon.com社から振り込まれるので、
通常ですと振込手数料が毎度1500円~ほどかかるらしく、もちろんロイヤリティから引かれます。
それを無料にしてくれるのが、新生銀行とシティバンクらしいので、KDPでガッツリ儲けたい人は
口座をもっておくとよいでしょうね。
そして
KDPのロイヤリティは通常35%。
出版社を介す普通の出版方法での印税は8~10%と言われてますから
これはかなり高いですね。KDPセレクトというサービスを利用すれば70%になりますが
こちらはKindleでの独占出版となり、web等でもコンテンツを一切公開しないことが条件となります。
僕はトコノクボブログを開設しているので、この条件は当てはまらないですね。
■Kindleコミッククリエイターを使って電子書籍用データを作ってみた。amazonが提供する
Kindleコミッククリエイター(通称KC2/無料)をダウンロードし、
Kindle用のデータであるmobiファイル(ePubでも可)を作ります。
さきほど作ったjpgデータをインポートし、見開きページや右開きか左開きかの設定をしたら
あっという間に作れます。これは早かった。
インターフェイスもわかりやすいので詳しい説明の必要はなさそうです。
■Kindle Previewerを使って事前にプレビューしてみた。Kindle用に作成したデータが実際のKindle端末でどのように見えるかをプレビューできるソフト
Kindle Previewerをダウンロードし、先ほどのできてたてホヤホヤmobiファイルを開きます。
これでKindle Fireなどで実際どのように表示されるかが疑似体験できるはず・・・!
と、思ったんですけど、どうも開いても
白紙のままなんですね。
あれ?なんでだろ。Kindleコミッククリエイターではきちんと表示されていたのに・・・。
・・・・。
・・・・・・・・。
この問題、
結局解決しませんでした。なぜ白紙のままなのか。ググってもググってもわからずじまい。
わだかまりをのこしつつも、
プレビュワーと単に相性が悪いだけだよねきっと・・・!と開き直っていよいよ出版です。
■Kindle Direct Publishingにアップロードしてみた。KDPにログインし、「新しいタイトルを追加」をクリック。
本のタイトル、フリガナ、ローマ字表記を記入し、言語、発売日、出版者名、本の内容紹介などを
続けて記入。出版する権利の確認でパブリックドメインの作品であることを意思表示し、
お客様が本を見つけやすくするためにカテゴリーを決めます。
そして表示画像のアップロードです。
ここでamazonが推奨しているサイズは「長辺2500px」とのこと。
本の原稿に比べてかなり大きめですね。事前に用意しておいたものを選んでアップロード。
次に価格設定します。これは自分なりに市場調査して類似した商品の価格を調べたりして
決めるといいでしょう。もし「この本は○○○円だ!」というこだわりがあるなら
それで設定していいと思います。ちなみに僕の場合は200円にしました。
100円でもよかったのですが、
2という数字が好きなもので。(根拠なんてそんなもの)
ロイヤリティもここで35%か70%かを選択します。僕の場合は上記理由により35%を選択。
出版ボタンを押したら、あとはamazonが販売開始するまで待つばかり。
1~2日は掛かるといわれていましたが、僕の場合、深夜1時にアップして、翌朝9時頃には
出版されてました。
どーーーん!!いつもの見慣れたamazonの画面に僕の(みっともないエッセイ)作品が
どーん!いやあ我ながらシュールな光景です。
で、早速一冊購入しました。無事ちゃんと見られるかワクワクドキドキ・・・。
iPad、iPhoneともに
無事動作確認完了!Kindle Previwerは一体なんだったんだ!!という謎を残しつつも
問題なくKindle用自家製電子書籍が発売されました。よかったよかった。
やり方がわかったらあとは素材があれば無料でいくらでも出版できるので、
時間があれば10年前に作った絵本なんかもリテイクして出版してみようと思います。
同人誌のように在庫を抱えるリスクもないので、
なにか本にして世に発表してみたいコンテンツをお持ちの方は
試されてみてはいかがでしょうか。

世の中には大ヒットはしなくても、特定の人にだけは心に響く、キラリと静かに輝く名作があるはず。
そういうものをリスク無しに出版できるKDPが流行るのはいいことだなぁと思うのです。
電子書籍元年が叫ばれて久しいですが、
Kindleを持ってしてもなかなか市民権を得たとは言えない現状があります。
Gumroadのように一瞬だけ持て囃されて消えてしまうことなく、
KDPは徐々に盛り上がっていって欲しいと思います。
いつの日か、まだ見ぬ名作と出会うためにも。なんつって。
そんなわけで、初KDP出版体験報告でしたー。
ちなみにKindleトコノクボ、ブログの原稿にプラスαしていますので
既読の方も是非どうぞ!(わかりやすい営業)