2013/10/20
【仕事】元裁判員の悲痛な叫びを聞いて思うこと。

フジテレビ「とくダネ!」放送用にめずらしく犯罪者のいない法廷画を描きました。
元裁判員の方が裁判員として担当した強盗殺人事件の公判中、
殺害現場の写真や被害者が消防署に助けを求める録音テープなどを見聞きしたことが原因で
急性ストレス障害になったとし、国を相手に損害賠償請求したという裁判です。
原告の青木日富美さんは現在も吐き気や不眠に悩まされているそうで、
時には写真の映像がフラッシュバックするというからお気の毒な話です。
遺体についた刃物による刺傷をいくつも見せられそうなので、その精神的苦痛は計り知れません。
「このような苦しみを味わうのは、私で最後にしてほしい」という意見陳述も理解できます。

続けて「裁判員の務めを強制するのは憲法違反である」との主張をされているのですが、
これはどうなんでしょう。
国側は「国民の司法参加を求めるための合理的な制度で、辞退もできる」と争う構えなので
今後注目したい裁判ですね。
「呼び出し状の文面が出頭しなければ犯罪者にされてしまうという恐怖感を抱かせた」という
原告の意見は主観でしかないし、そもそも裁判員制度の合憲違憲については
2011年に最高裁判所で「合憲」との判決が下っているので、
その結論は出ているように思います。

原告の方は「(裁判員を)やった人でないと、この苦しみはわからない」と
記者会見で話されていましたが、それは実際そうなんでしょうね。
一生のうちに裁判員に選ばれる確率は67分の1程度といわれています。
決して他人事ではなく、裁判員になったらその記憶は一生忘れない強烈な体験として
心に深く刻み込まれることでしょう。
だからこそ、事前にきちんとそういう説明は必要だし、了承した人だけが挑むべきだと思います。
裁判員制度そのものが問題なのではなく、プロセスの改善が求められている事案だと思うのです。
青木さんの言う「最後にしてほしい」という願いは本当に共感できます。
4年前、奇しくも「とくダネ!」キャスターである小倉智昭さんのラジオ番組に出演した際に僕は
「新しい制度が始まって最初からうまくいくことなんて有り得ないと思う。色々問題は出るでしょう」
と言いましたが、その問題の一つがこれだと思います。
責任ある立場の方々に、是非とも是正をお願いしたい。青木さんの体験が無駄にならぬ為にも。
コメント
Re: No title
2013/10/25 23:04 by 榎本よしたか URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2013/10/25 18:58 by 編集