
具体的には、クライアントとの向き合い方、普段の行動面におけるタブー、自己分析と売り込み方法、自己開示の有用性について、といった内容です。
後日、参加者の方から「勉強になった」「参考にします」などのメッセージをいただき、やってよかったなとうれしく思いました。その後の懇親会では普段お話できないような業種の方々とも交流できてこちらこそ勉強になりました。また僕の体験が役立てるこういった機会があれば積極的に請け負いたいと思います。
さて、今回はフリーランスという幅広いテーマで語りましたが、クリエイターの活動について語る時、僕が参考にしている報告書があります。
それがこちら。僕が所属している
日本イラストレーション協会(ジャイラ)が発行している「
クリエイター実態調査アンケート報告書」です。

現在のイラストレーターを中心とする日本のクリエイティブ関連事業者を取り巻く環境や営業実態について調査し、業界全体の課題への取り組みや行政機関への働きかけに使用されている報告書です。
その調査結果の一部がジャイラ公式サイトにて公開されているので、ご紹介したいと思います。

回答者は2014年度版で273名。回答エリアは
西日本エリアが27.1%
中日本エリアが5.38%
東日本エリアが67.4%となっています。東京に限ると37%。ネットの世の中にあってもやはり首都圏に人は集うのだなと思う反面、想像していたよりも東京一極集中ではないなという印象も持ちました。
ちなみに地元和歌山は0.4%。
ああ・・・なんかわかる。僕が独立した2002年ごろなんてフリーランスクリエイターという存在がそもそも広く認知されていなかったので、地元で営業活動中に「
え?お前金とんの?」なんて言われたりしたっけなぁ・・・なんてノスタルジーに浸りそうになりましたが、和歌山でも全国の仕事を取ってやっていたので、地方で創業するデメリットはさほど感じていませんでした。今は法廷画家業で東京地裁へのアクセスが増えたことから東京に住む利便性を感じていますが、それがなかったら和歌山で今も活動していたでしょうし、問題なくやっていけてたんじゃないかなと思います。
ただ、同じフリーランスが身近に居なかったのはたしかに孤独ではありました。今は冒頭で語った和歌山創業スクールのような集まりもありますし、地方の状況も今後はまた変わっていくのでしょうね。

次に、
一年間に受注したクライアントの数について。
なんと1社が8%、2~5社が47%とのこと。55%が1~5社との取引で一年を過ごしているんですね。これはちょっと驚きでした。前年の調査では5社以下は51.9%というからやや増えていることになりますね。
それで十分利益が得られているなら、今は良いでしょうけれど、将来のことを考えると
正直かなり少ないのではと感じました。リスクマネジメントを考えた時、最低でも10社かなと思います。
ちなみに
2015年の僕のクライアント数は24社(イラスト制作をメインにテレビ出演等含む)でした。21社以上と答えた方は全体の8%とのこと。「クライアントの数が多ければいいってもんじゃない」という声もあるかもしれませんが、僕は
多ければ多いほど良い、と考えます。たとえ小規模な仕事であってもつながりを持つことは、将来のリスクを減らすことに繋がるからです。ここで一句。
「いつまでも あると思うな 太い客」
次に、
クライアントとのトラブル経験について。
「特にない」が3割程度、あとは制作代金の支払い遅延や不払い、契約内容以上の作業要請、制作代金の値下げ強要などのトラブルがあるそうです。僕は幸いクライアントに恵まれてきたのかトラブルというトラブルには遭遇せず今に至ってます。同業者の料金不払いや無断使用などの切実な話を聞くと、実に幸運だと思います。
僕がセミナーでよく言うのは、「
自分は現在どういう権利を有しているのかをしっかり把握しておくことが大切だ」ということです。クリエイターにおいては「
著作権法」「
下請法」の勉強は必須です。クライアントが著作権、ないし著作者人格権をないがしろにしてくるようならこれらはベルヌ条約という国際法によって守られている権利である旨を伝える必要があるし、下請法に違反しているようなら
公正取引委員会のwebサイトがわかりやすく解説されているので(特に親事業者の禁止行為の項目)、そのURLを伝えてこちらの主張にはこうした法的裏付けがあるのだと諭すなんてのも一つの手です。
「ウチのクライアントほんど酷いんスよ~」とヤケ酒煽りながら愚痴りあい、結果泣き寝入るようなことを繰り返すよりも、先方が法に無知であるなら、こちらから教えて教育してあげる、くらいの気持ちを持つ方が建設的でいいと思うんです。
関連する本をそれぞれ3冊ほど読めば弁理士や弁護士とも渡り合える知識が付きますし、法律というものは「
知るものには味方になり、知らないものには敵になる」なんて言われています。中小企業庁には相談窓口があるし、無料法律相談などもありますが、基本的に
無料で赤の他人が自分の絶対的な味方になってくれるなんて思わないほうが身のためです。フリーランスは基本一人、自分の足で立つしかない存在なので、まずは知識でもって武装しておくのが、結果としてトラブル回避に繋がるのでオススメです。

次は、
健康診断について。
「2~3年に一度は受けている」が一番多く、「毎年受けている」が二番目ですね。これは年齢にもよるのですが、30歳で一度きっちり人間ドックで診断を受けたほうが良いと思います。35歳からは毎年がオススメ。「でもお高いんでしょう?」とお思いかもしれませんが、補助金制度なんてのもあるので活用されると良いですよ。僕の場合、加入している文芸美術国民健康保険の補助金が27,000円支給されるので
人間ドック日帰りコース 42,984円 - 補助金 27,000円 = 15,984円と、1.6万程度で受けれます。しかも僕が行く楠樹記念クリニック(新宿)ではランチ付き。
病気は早期発見、早期治療が一番安く済みますし、体の負担もありません。「でもちょっとめんどう」なんて思わずに毎年の習慣にするといいと思います。例えば「桜の季節だな・・・そうだ人間ドックにいこう」といった感じで習慣化すると忘れなくて良いですね。40オーバーになれば市や区での無料健康診断がありますが、僕は有料の診断をオススメします。
病気に関しては「手遅れ」ということがあるので、「あの時きちんと検査していたら・・・!」と言っても後の祭り。未来の自分や家族を悲しませる事態を想像すれば、一年に半日、1.6万円の費用なんて高いものじゃないはずです。
健康診断も大切ですが、予防医学も大切です。
日々の生活習慣や作業環境の改善、メンタルケアにも意識を向けたいものですね。
このところ僕が気をつけているのは「
忙しくしすぎないこと」です。
「忙しいのはいいことだ」なんて言う人がいますが、これは明確に間違ってます。心を亡くすと書いて「忙しい」。そんな状態が「いいこと」なわけないんですね。「
儲かってるのはいいことだ」なら正しいと思います。
「そうは言っても忙しくしないと儲からない!」と思うのも間違い。そういう状況なら「忙しくしないと儲からない仕組み」の改善こそが急務であって、たとえば作業スピード向上の模索だとか制作料金の交渉だとか、条件のよい新規クライアントの獲得だとか、やるべきことが多々あるはずです。
「いつも忙しくする」のは
精神衛生に悪いことが科学的に証明されています。うつは心の風邪、なんて言われますが、あんな治りにくい風邪はありません。へたすると数十年ひきっぱなしなんてこともザラにあります。2~3年がんばりすぎた(忙しくしすぎた)ためにうつ病を発症するケースも少なくありませんが、それでリタイアせざるを得なくなるなんて本末転倒もいいところです。
人生には「ここががんばりどころ」というのが確かに存在しますが、僕が言っているのは「がんばらなくてもいい」じゃなくて「
過ぎたるは及ばざるが如し」ということなんですね。
フリーランスのワークライフバランスなんて
本人が意思をもって変えないと絶対に誰も変えてくれませんから注意したいところです。常に正しく生活するなんてのは困難ですが、「常に忙しくする」なんて「明確に間違っていること」は避けたいものですね。
・・・・・・と、そういう僕もこの3ヶ月ほどは多忙で全く休みなく過ごしてしまいました。セミの鳴き声が気がつけば鈴虫の音色に変わっていたという哀しい有様。
そんなわけで来月はぶらり
宮古島へと旅立つ予定を入れました!失われた夏を取り戻してこようと思います!yeah!こういうリフレッシュ、絶対に必要ですよね。オフシーズンに長期休暇が取れるのもフリーランスの大きなメリットです。
この報告書、他にも「業務で使用しているソフトについて」や「入金までの期間」、「新規クライアント獲得方法」などアンケート内容が多岐に渡っていて非常に参考になります。現在ジャイラが「
クリエイター実態調査アンケート2016」の回答者を募集しているので会員の方々は是非ご協力ください。
今後のクリエイティブ業界の活性、発展について我々の生の声を役立たせる良い機会だと思います。
というわけで、フリーランスについてのセミナー講師を担当しました報告&ジャイラのクリエイター実態調査アンケートのご紹介でした。フリーランサーの皆様にとっても何かしらお役立て頂ければ幸いです。
長々と書きましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
セミナー受講いただいた皆様、当日遅くまでお疲れ様でした。どうか適度な労働、適度な休暇でバランスの取れたHAPPYなフリーランスライフを!
(来月の沖縄、台風こないといいなぁ・・・)おしまい。
注:図表は、日本イラストレーション協会の許可を得て使用しています。
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